|十|ともあれ全体の感想
初出 '00/11/13 02:49
'02/05/15 一部修正
面白い企画で、読み応えのある一冊ではありましすが。既出の名作と新作書き下ろしを一線に並べて評価するわけにも行かないと思うので感想を述べるのも難しいところです。これは新作を書く側にとっては非常に酷な企画なのかもしれません。
実のところ、この一冊の中には、「頭を殴られるような衝撃」や「どうしてもあとを引いて消えがたい味わい」の作品はありませんでした。もっとも、これはテーマからして「狐につままれたような」「奇妙な味」の作品が多かったためかもしれませんが。(私も嫌いではないんですが、どうも味わい切れてない気がして評価を保留してしまうことが多くて)
ともあれ、10月の祝祭の「何かが違う」空気に触れる愉しみを味わえたことは確かでしたが。
従来の「異形コレクション」各巻のように順位付けをするのも難しいので、ともかく気に入ったものを挙げていこうと思います。
◎:スタンダード ※:オリジナル
◎「かくれんぼ」都築道夫
母親に女の子が、彼女に彼が見分けられなかったことは遊園地の魔力なんでしょうか。
※「オクトーバーソング」山田正紀
花電車の記憶より何より、帯状疱疹の痛痒さの描写がなんとも。
※「虚空より」篠田真由美
「天使の光臨」の正体もスーパーナチュラルな現象ではなかろう、とは思いました が……うう、直接書かれない生臭さが。
※「祭りにはつきものの……」菊地秀行
「異形」にコミカルな面を持ってくるのははじめてじゃないでしょうか。
それはそうと、このお母さんの旧姓は「外谷」とか言いませんかね。
◎「蜥蜴」内田百間
いまだに狐につままれたような心地でおります。「本当のこと」とは?
※「十一月一日」早見裕司
長老のキャラクターがなんかいいですね。
枝葉の描写は思い切り刈り込まれてますが、(主人公が直接見聞きしていないためか)もっと書き込まれても良かったかも。
◎「祭の晩」宮沢賢治
過去の日本にあった「山男」という「異界の者」。今の日本にはもう「異界」として存在することはないかしら、と思うと切ない気もするのです。
◎「集会」萩尾望都
これ、幼少の(ということにしといて下さい)頃に週刊マーガレット誌上で読みました。このシリーズがきっかけでブラッドベリ短編集を手にしたもの。懐かしい。今読んでも十二分に魅力的です。
これが頭にあったため、以前SF大会に参加したときなど、閉会後に友人達と「この次はセーラムで!」などと言い合ったものです。いえこれは余談。
※「ロッキー越えて」奥田哲也
「X-File」のオマージュかと思えば、更に猟奇な展開。やはりハロウィンは子供の祝祭――か……
◎「かごめ魍魎」秋里光彦
異界も決して優しいばかりではない……特に一度逸脱した者に対しては……
さて、この後はやはりかごめの輪に囚われたんでしょうか。そう言えば、遠くアイルランドでは、妖精の輪に入った者は……
「十月のカーニヴァル」データ
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