(R)全体の感想と上位ご贔屓作品

初出 '00/11/27 16:19
'02/05/14 一部修正



 冒頭二、三作を読んだ所で、「なんか今回レベル高いなあ」とわくわく。
 まあその後に「うーん、わからん……」な作品もあったもので、全体でとんとんというところでしょうか。

 しかし今回、原稿が集まりすぎたという話も聞きましたが、作品の随所から執筆者の愛と情熱を感じますね。
 そういえばあんまヒットしなかったようですが、今年は「アンドリュー NDR114」という映画もありましたし(アシモフ再読のきっかけにはなりましたな)他にも「アイアン・ジャイアント」とか、「エピソード1」でR2D2や造りかけのC3POの姿を見たりと、ここしばらくの間に「ロボットの友達」というヴィジョンを再認識した人も多いのではないでしょうか。
 リアルの世界でもAIBOは立ち耳のバージョン2(初期バージョンビーグル型に対し柴犬型か?<あれは仔ライオン型だそうで―'02/5/14附記―>)が出る好調で、一方では廉価版としてプーチが売り出されたりと、「一家に一台おともだちロボット」も遠い先のことではなさそうな状況ですが、このゆるやかなファースト・コンタクトに人類はまだ適応していない、という気がしています。
 まあ実のところ、同じ種の間でだって、私達は隣にいるヒトのことすらちゃんと理解しているかどうか分からない。どんな形であれ「違う物」とのギャップを埋めていく作業が必要なら、個人的には「先端技術を駆使した高性能ロボットで画期的に生活を改善!」という力の入った導入よりも、「お、新しいお人形ね?」くらいの対応のがうまく行きそうに思いますが。

 というところで、ご贔屓作品を上位5作選んでみました。


  ご贔屓の作品の順位 & [コメント]

1位 「卵男」平山夢明
 「Ωの正餐」でも衝撃を受けましたが、この方猟奇なキャラクターと描写が秀逸ですね。
 細かい事を考え始めると、ほんとにこんなキャラクターを設定することがカウンセリングに有効なのか? という疑問はあるのですが…

2位 「サージャリ・マシン」草上仁
 外科医ロボットなんて生臭い展開に決まってるじゃないか、とは思いましたが、ロボット3原則の抜け道を探るというSF命題を鮮やかに描いてくれたことに拍手。ああ生臭い。

3位 「錠前屋」高野史緒
 個人的に歴史SFが好きだから、という理由による気がするのですが、この作品の場合、あと「方言の力」でしょうかね。ノルマンディってフランスの北関東だったのね。

4位 「小壷ちゃん」梶尾真治
 タイトルに「ん?」と思いつつ、あまりにほのぼのした設定に「まさか久しぶりにしみじみ系?」と期待し/疑って読んだのですが……
 やっぱりカジシンバカSFでしたぁっ。芸風が複数あることを知る読者に仕掛けた叙述トリックかしら。(ないない;)

5位 「自立する者たち」斎藤肇
 人体にインタフェイスを付けた動作補助ロボットのイメージが良いですね。「ニニンバオ号」のネーミングや、使う老人・ケアをする人間等の描写も生きていて、使用者が死んだ後もデータを捨てられないぼんやりとした切なさが効きます。
 と、いうところまでが非常に良かった物で、その後のデータの使い方についてはちょっと気が抜けてしまったのが惜しいところ。冒頭と結末のフレーズに込められたアイロニーもいいのですが、なんとなく付け足しっぽく感じてしまうのです。


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