(玩)ご贔屓作品と雑感

初出 '02/01/08 16:38
'02/03/13 一部修正


 玩具館とギャング団とロングランと甘酢餡と総スカンくらい違う。(やっぱり不調だわ)

 なんてことはさておき。
 激動の(と後世で言うであろうか)2001年も終わり、2002年がやってまいりました。
 明けましておめでとうございます。皆様如何お過ごしでございましょうか。
 私事でいろんなことに手を出して感想アップが遅れているうちに、はや年も改まり、しかも既に「マスカレード」は書店店頭に並んでしまったではありませんか!(買いましたが)
 ともあれ、遅ればせながらようやく「玩具館」の感想を。ああ泥縄。m(__)m

 今回は初登場の方も多く、何度も登場しておられる方々もそれぞれ味わい深い作品を出しておられ、力が入っているという印象を受けますね。外題の処理法のヴァリエーションにも富んでおり、大変愉しみました。
 やはり皆様、玩具ってお好きなんでしょうか。生きてないけどトモダチ。執着の対象。実利ではなく、感情を仮託するための道具。
 衣食住の必要最低限には含まれないはずだけど、ずっとヒトの心の隙間を埋めてきた、と考えると、その存在理由からして異形のモノでありましょうか。

  「心の隙間を埋める部品を探し続け――」from 映画「玩具修理者」


 で、ご贔屓作品ですが。
 今回は、「上位五作」という形では選べませんでした。収録作品名リストをひねくり回して散々考えてみたのですが、どうにも甲乙付けがたいのです。
 ということで、順位なしで以下五作を今回の私のご贔屓とします。


  ご贔屓の作品 & [コメント]

「猫座流星群」皆川博子
 中盤から結末の予想は着くのですが、それが「厭な予想」であるだけにじわじわと収束に近付いていくのが怖い。どちらかが死ぬ、とどこまで分かっているのか、あくまで無邪気そうな姉弟にぞくりとさせられます。

「よくばり」佐藤哲也
 この方の小気味の良い皮肉は病みつきになりそうです。著者サイトに公開しておられる「沢蟹まけると意志の力」番外編を読んで爆笑した身には、この「記憶とは失敗に終わった受け身の結果」、あるいは「むしろ貪欲であることのほうが好ましい」といった身も蓋もなさがなんとも。

「来歴不明の古物を買うことへの警め」雨宮町子
 これも「反復」の怖さですね。二度目以降はもう何が起こるか分かっているのに止められない。
 「さあ、さあ、さあ」とかけ声までかけて、怖いことを躁状態で迎え入れてしまう、というのは私は非常に好きですね。個人的にはオチなしでもいいくらい。

「喇叭」浅暮三文
 これを入れるのはどうかとも思ったのですが。基本的にこれまでは、分からない物を無理に評価するのは止そう、というスタンスで来ていたのですが、この引っかかり具合はただ事ではない。
 何がどうなったんだ〜! 答えって一体何〜!?と、頭から離れない。なんと罪作りな作品。

「救い主」田中啓文
 おおこれはいつもながらどろどろ。
 自分の頭蓋骨をひっかくキシシ、キシシ、という音なんざ、それだけならば「厭」感に慣れてしまうところですが、突然正気に返って「子供を抱きしめるまでは」とか「彼女は親友だったのに」とか、実は善意の宇宙人でした、とかいうあたりとのギャップの哀しさが効いています。


 ちなみにこれらの後に次点として僅差で、
  「お菊さん」飛鳥部勝則
  「弟」加門七海
  「貯金箱」北原尚彦
  「女の館」菊地秀行
 あたりが並んでいます。
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「玩具館」データ
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