DASACON6の記録

 2002年10月19日、文京区本郷にて開催された、DASACON6に参加したのだった。
 この文章は私のごく個人的な視点からのイベント参加記録である。
当テキストは暫定バージョンです。後日、思いだした順に加筆する可能性があります。

開会まで
 DASACON当日の夕方。都心はあいにくの雨であった。しかも土砂降り。
 ねこちさんと本郷三丁目駅で待ち合わせて中華料理店で夕食をとる。「誰かなんか悪いことでもしたのか」などと呟きながら雨をかいくぐり(心当たりが在りすぎてわかんないぞ)、18時20分あたりに会場についてみると意外に人が少ないのだった。

 玄関でヒラマドさんにお会いしてご挨拶。ヒラマドさんとは確かNIFTYの某フォーラムのイベントでご一緒して以来、色んなところでちょっとずつお見かけしてはご挨拶、という間柄である。今回はスタッフということでお忙しそうであった。
 受付に行くと、和服をお召しになっておられたおおたさん(初対面)が、「今日は僕の服装で遊んでやって下さい」とにこやかに言われる。
 そこでつい、「それは、脱がせてもいいということ?」といきなり鬼畜な暴走をかます。すいません、しょっぱなっから。いやその、脱がせて何をしようとか考えた訳じゃないんですけど。

 ヒラマドさんに案内していただき、二階の寝部屋へ。既にららさん、とりこさん、たなかさん、神崎紫音さんがいらしていて、お菓子をいただく。ありがとうございます、美味しゅうございました。

 そろそろ始まる時間だ、というので会場である広間に出て、まずディーラー卓の商品をチェックする。でも今回はあんまり荷物を増やしたくなかったので自粛。
 が、一冊だけ、「沢蟹まけると意志の力」をみつけ、興奮の余り「こ、これは、どなたが!? 誰にお金払えば!?」と指を「わきわき」させながら訊ねる。
 が、これはおおたさんが「見せびらかすために持ってきたんだよー」ということが判明。くくくく。

 適当に座を占めて――結局一番前の砂被り席であった――正面を見ると、「ああっ! 『ちよ父』だ!
 オレンジ色の原寸大「ちよ父」が、怪しげな微笑をたたえて床の間に鎮座ましましていたのである。衝撃の事実――って、春のSFセミナーあたりでも見ましたな。
 しばらくして浅暮三文氏と倉阪鬼一郎氏が同じ列のやや後ろの方に座を占められ、ミーコ姫と今回のお供の電動アメショぬい・ミーニャちゃんが現れると、ミーニャちゃんはお腹の機構の刺激で「みーぃ、みゃーぃ」と鳴きながら体を捩るもので、辺りの女性陣を中心としたファン層は、撫でる奪う振り回す、と、そりゃもう大騒ぎであった。私はというと率先してミーコ姫とミーニャちゃんを略奪したのだった。(いひひ。)
 ところでミーコ姫、ちょっと肩口が痩せましたね。秘書猫業(またはネットアイドル?)も苦労があるのか。

 やがて、グラスとビールが回される。がしかし、乾杯はまだらしい……ので実はちびちび飲みながら待ってました。すみません。
 「おやつは三千円まで、ビールは酒に入らない」などと呟いていたのは内緒だ。(いや実はそんなに強かないです。中ビン空けるまでもなく安上がりに酩酊しちまうんですが)
 ちなみに卓を挟んで私の向かい側には鈴木力さんが、はす向かいには柏崎玲央奈さんが座っておられ、開会〜ゲスト企画中、何度もビールをついで下さったのだった。お気遣いありがとうございます。m(- -)m

自己紹介
 ゲストも到着し、開会。
 まずは参加者全員の自己紹介と「現在読んでいる本」について一言、というので、とりあえず「異形コレクション」ファンサイトについて宣伝する。まあ会場にいらしててそのあたりに興味をお持ちの方は、だいたい事前に参加者リストのリンクからご来訪いただいてると思うのだが。
 著者リンク集のための公式/ファンサイトデータ募集についてもちょっと触れる、と、浅暮三文氏が名乗りを上げて下さる。はい、相互リンクしていただいてます、お世話になっております。m(__)m
 最近読んだ本、については「銀色の恋人」のことで何か偏ったことを言ったような気がするが、よく憶えていない。

ゲスト企画
 今回の目玉。私のようなミーハー者には何を於いても駆けつけねばというイベントなのだった。
 正面に長テーブルを置き、向かって左から、司会進行/佐藤氏への質問担当のu-ki総統、佐藤哲也氏、高野史緒氏、高野氏への質問担当のジョニィたかはしさんが座を占め、用意された質問をしつつその絡みでお話を伺う、というもの。
 詳細は――テープを回していたので、いずれ公式サイトにアップされることだろう、多分。(それより、各参加者のサイトのレポートにも出るかもしれない)ゲストが司会進行の茶をつぐなど、あまりにも和やかな雰囲気であった。
 どうでもいいことだが、強い興味を持っている分野の著作への影響、といった質問の中で高野氏が「私の場合はずっと中世史を――」と言われる度に、私が「中性子? そいつぁ危険だ」と脳内誤変換していたのは秘密だ。更にどうでもいいことだが、高野氏への「他に過去に影響を受けた作家などは」という質問に対し、「私はコクトーが非常に好きで……」とお答えになるのを聞いて、私が「ああ沖縄名産。うーんでもそれはちょっと太りやすいかも〜」などと……(以下略)
(#ちなみにこのネタは後でヒラマドさんとのお話でも使った。
 「それは?」
 「黒糖焼酎だよ」
 「ああそれはフランス文学の薫り高い」
 「コクトー違いやがな〜!」
  つっこんでくれてありがとう。m(__)m)

 最後に、会場からの質問の時間があったので、私も手を上げて、佐藤氏にかねての疑問を問うてみた。
『妻の帝国』の随所に繰り返し出てきたアイテム、例えば「ウェハースサンド」や、「駅前のメスカマキリの像」などは何かの寓意でしょうか?」
 お答えは、「ウェハースサンドは特には、というか、使おうとして回収しそこねた。メスカマキリの像は実在します」とのことであった。すみません、重箱の隅をつつくような読者で。
 メスカマキリ像の所在は「どこだか教えてあげない」と言われたが、後の宴会の雑談の中で教えていただいた。そーか、いつか見に行ってみよっと。

サイン会
 SFマガジンの塩沢編集長が、出来たての「アイオーン」を持って会場にかけつけ――というか、現物は先に送られていたのだが、「塩ちゃんが来るまでまだ売っちゃ駄目だって」(高野氏による)とのことだったので指をくわえて待っていた――先行発売が実施されたため、即購入する。持ってきた分は完売していた様子だった。めでたい。
 ところでこの時、「アイオーン」を置いていた卓には、一緒に10/31のイベント 「新世紀SFの想像力」の聴講券の葉書が置かれていた。確か聴講希望者は葉書で応募、とのことだったので私も応募していたのだが、そのときはまだ届いていなかったのだ。もしかして抽選なのか、と思っていただけにちょっと衝撃であった。
 大慌てで塩沢編集長に「こ、これ、応募してたら必ず送られて来る物ですか!?」と訊ねると「はい、応募者全員送ってます」とのお答え。じゃあ到着が遅れてるだけなのかな〜、と思い、他の方のために取らずにおいたのだった。(その後、翌日あたりにちゃんと届いたのだが)
 「妻の帝国」も現物を販売しており、企画終了後サイン会となる。多くの参加者はその他にも自分の本を持ってきていたので、サイン待ちの行列は延びる。お二方が腱鞘炎になったりしないかとちょっと心配になったことであった。
 でも私もサインを頼む。佐藤氏には「サイト、時々使わせていただいてます」と言っていただいた。おお活用されることこそデータサイトの意義、ありがたいことであります。
 しかしその場では、いやメンテナンス環境が脆弱で、時々編集中にデータが落ちるんで不安なんですけども、などと間の抜けた返答をする私であった。
 高野氏にも「字汚くてごめんね」などと恐縮されながらサインをいただく。いえいえ、私は友人知人から「おめ、字腐ってるぞ」と言われるほどでございまして、お気になさらず。ありがとうございました。

 その後、企画の最中に遅れて到着され、卓の端の方でサイン会が終わるのを待っておられたiTさんこと井上徹さんをみつけ「今日はお仕事でしたか?」と訊いたところ、筒井康隆訳「悪魔の辞典」の出版パーティに行っていたとのこと。ちょろっと現物を見せていただく。
 iTさんと話しながら同じくサイン会の終わるのを待っておられた佐藤亜紀氏と、「そういや中学生の頃、『朝日中学生ウィークリー』という奴の柱に何故かこれが一語二語ずつ載ってて」「前には文庫で出てたね」などというお話をする。筒井康隆氏はいつから髭を生やしたんだっけ、昔、小林亜星と「幻想ミッドナイト」に出演してたときは――などという話も。
 そこでふと、「悪魔」繋がりで思いだした横溝正史地口提灯(元ネタは実はこちらの10月18日分)の話をしたところ、亜紀氏は卓に突っ伏してしまわれた。iTさん曰く「かずめさんって、結構こういう鬼畜なこと言う人ですよ」とのこと。あ、これも鬼畜すか; それはどうもすみません;;

 しかし、会場にいらっしゃるなら亜紀氏の著書も持って来るんだったなあ、と思い、折角なので少し「1809」のお話などお訊きする。(以下、「1809」のネタバレなので背景色)
「あの時代の工兵隊が爆弾処理なんてのまでしてるとは思いませんでした〜」
「してないよ」
 あうっ。そこがフィクションでしたか;
「なんとかして『赤か青か』をやろうとしたんだけどね」
「むー、でもあれは、爆弾本体にとっとと水掛けちゃう訳にはいかんのですか?」
「水そんなにないでしょ。あの時代ボタンとか全部金具だから危ないし」
 ああなるほど。
「うーむ、主人公が水被って入って、手桶一杯でも運んだ水をまず爆弾本体にかけちゃうって方法は?」
 しかし、考えてみると手桶一杯分でどの程度の爆薬を湿らせられるか、という問題はある。
「まあ、それならバケツリレーとかした方が確実だろうけど。結構大事になっちゃう」
 ついでにちょろっと、水を掛けるとまずい機構について考えていたことをお話しするが、そこまで行くとSF的――つかあるミステリで使われてたネタなんですけどね。まあその時代に使えるような○○があったかどうか。

ファン交流――を遠巻きに酒盛り
 ファン交流を考える会、を考える……という企画だったらしい。が、SF的に薄い人間である私は、あまりにも濃密なSFファンダムの空気に気圧され、外縁部で大人しく飲み食いする。
 途中、ディーラー卓に置かれたノートパソコンで、「ご自由にお試し下さい」モードになっていた、一歩さんの「SF属性調査」をやってみる。が、あんまりにもSF度が薄く読了数が少ないために、信頼できる結果とは言い難い……なにせリスト中で読了してた本が二桁にもならない; 結果は「メジャー嗜好」かなんかだったが、まあそうもあろう。
 宴会の喧噪の中でふと見ると、塩沢編集長は半袖のボタンダウンシャツ一枚の軽装である。そういや以前高野氏のサイトの日記に、冬のさなかに塩沢編集長はトレーナーと薄い上着くらいで――といった記述があったのを思いだし、他人事ながら心配になる。余計なことだよなあ、と思いながらも、「あのう、今日の服装はそれだけですか?」とこそこそお訊きしてみると、「いや、今日はこのほかに二枚くらい」というお返事だったので、大変ほっとする。だってお肉もあんまりついてないように見えるのだ、この方。

 途中、入浴が11時までなのに気が付いて、残り15分ほど、という時間だったので大慌てで風呂に行く。や、大きいお風呂はいいね。ちょいと慌ただしかったけど。

賞の話――を遠巻きに酒盛り
 会場の隅で浅暮三文倉阪鬼一郎、山之口洋、佐藤哲也各氏が集い、熱く小説について語っておられるのを、輪の外縁で拝聴する。
「わかった! 分かったよ! 俺、今びんびんきてるよ」
(それは『おのずとわかる』というやつだろうか?)
「実験小説の師匠と呼びたい!」
「いや実験小説じゃないんだけど……」
 等々。(敢えて発言者を秘す)
 その間、どういう話の流れだったか忘れたが、佐藤亜紀氏からスポーツクラブにおける驚異の世界についてお話を伺う。世の中侮り難し。でも私は視界に入るならぴちぴちした肢体の方が嬉しいと思うの、個人的にですが。
 そのうち高野史緒氏、iTさん夫妻も近くに来られて、ぼちぼち飲み食いしながら語らう。既にして卓上の菓子やつまみの類は食べかけの袋が多かったが、不自由するほどのことはなかった。
 高野氏は、食べ物に興味を示す夫君をしきりと牽制しておられた。ダイエットを徹底していたらしい。
 そこで、近くにあった菓子パン(ココア味)の封を開け、一切れ頂いて、お二人に向かいにっこり笑い、「美味しいよ?」と言った私であった。
 高野氏は私に向かって「パーンチ!」の仕草をするも、夫君の腕はしっかり押さえていたのだった。(ごめんねいじわるして。ノ( - ;))

 その後も、佐藤亜紀氏を囲んで女性陣中心にお話しした。
 亜紀氏とねこちさん、とりこさん、ららさんなどは笙野頼子の話題で盛り上がり、一読を勧められる。うむ、私も猫狂いなもんで、強く惹かれるところなんですが、一度踏み込んだらずるずると大量に購入しそうで手を出しかねているのです。
 しかし猫道者としては(なんだそりゃ)「愛別外猫雑記」あたりは抑えておくべきでしょうか。ねこちさんは「S倉迷妄通信」について熱く語っておられたが。

 その他、私がヴェネチア市内で一匹も猫を見なくてひどく哀しかった話とか(佐藤ご夫妻が行かれた折には市内のそっちこっちでたくさん見かけたという……この違いは何にゃ!?)、イタリア料理も魚介類が旨かった話(「そりゃーあれだけの街中のゴミがみんな流れ込んでんだから蛸だって旨くなろうもんよ」とは亜紀氏の弁)とか、バラライカ宮崎さんがウィーン経由でオペラなぞ見てからイタリア入りする話、バラライカとウード、リュートの構造の話、またとりこさんらと、ライトノベルのバブル期の作品にがっくりきて手を出さなかったが(確かに粗製濫造という部分は大きかったっすね、80年代〜90年代半ば頃まで;「指輪物語」をはじめとするハイ・ファンタジー読者にはゲーム系の「ファンタジー小説」は辛かったことでしょう)最近「異形」などのジュニア小説出身作家の作品を見てちょっと読んでみようかと思ったというお話、その流れから、TRPGとゲームブックの話、岡本賢一氏のサイトにあるゲーム「作家への道」(あんまりにも生々しくってお薦めだ!)の話、津原泰水氏の短編の話(「十二宮12幻想」収録の「玄い森の底から」について)、等々……を、する。
 多くは馬鹿話であった。というか、私の脳内で馬鹿話にしたのだが。例えば、とりこさんに「岡本賢一なら『傭兵グランド』がいいよ」とお薦めいただいたのだが、岡本賢一作品というとまず「薔薇姫さま」を思い出しちゃう私って。(いや、未入手なんですけども)

オークション――の始まりを確認し
 夜半も過ぎた頃にオークションが始まる。私がどきどきしながらずっと気にしていたのは、古本屋から調達したという「イラハイ」「沢蟹まけると意志の力」の二冊組、3セット。
 がしかし、オークションのはじめに、「この3セットはオークションの最後に〜」と言われ、すごすごと引き下がる。そこまで行き着く頃には絶対明け方になっているではないか。しかもゲスト企画の間の会場の反応からすると、すごく競争率高そうだし。
 そろそろ体力が尽き、また早く起きなきゃならん事情もあって、大人しく寝部屋に引き下がる。折角のイベントだというのに力一杯遊んでないところがちょっと悲しい。
 後で知ったところによると、この佐藤哲也著書セットは四千円前後で落札されたらしい。――大人しく復刊ドットコムの票がたまるの待とう。くやしくなんか、ないやいっ。

20日朝の間抜けな事実
 早めに、とはいえ六時半だからまあ普通に起き出して、こそこそと帰宅する。
 なんでって、今回は合宿だけの企画だから、ってんで猫を預けてないんである。日頃日中はそうしてるとはいえ夜の不在はあんまりなく、留守が許されるのはせいぜい十四時間が限度なのだ。
 帰宅してみると流石に荒れた痕はあった。まあ予想の範囲内ではあったのだが、片付けて会場に向かうも、到着した時には既に閉会した後だったのだった。だから、u-ki総統の「うちに帰るまでが、DASACONです」も聞けなかったのだ。
 そういうわけで、皆様にはお別れもお礼も申し上げられず、誠にご無礼致しました。またの機会によろしくお願いします。

会場でお会いした皆様については、文中からは敢えて直リンクしませんでした。(文中の人名のリンクは「異形」執筆陣についてのみで、当サイトの執筆陣リストの対応部に飛ぶようになっています)
 文中に登場の参加者の皆様については、DASACON6参加者一覧から飛んで下さい。

かずめ/

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